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2016年3月 5日 (土)

最愛の子を見てきました

ようこそのお運び、厚く御礼申し上げます。


『最愛の子』を見てきました。公式ホームページはこちら。個人的ランクB。中国で実際に起こった誘拐事件を元にされた映画です。実際、中国では乳幼児誘拐が普通に起こっているそうです。人身売買です。経済という一面では世界一と言ってもいいところまで上り詰めましたが、その国内においては貧富の格差と人心の荒廃ぶりには目を覆うものがあります。


私も子供のいる身として、誘拐されるシーンや、子供がいなくなったことで必死になって探す親に心底感情移入してしまいました。心が痛くて痛くて。


貧しい中からも、父親は懸賞金をかけます。そしたらすぐにその金目当ての詐欺師共がワンサとくるわけです。子供を必死になって探す親の気持ちなど全く考えず、とにかく自分の事しか考えない魂の腐った人間と呼べないような輩がワンサと。でも映画の中盤でこの父親が言います。誘拐されて2年も経つと全く情報が来ない。詐欺師と言えども群がってきていたときは、その嘘の情報とは言え『生きる希望』になっていた、と。これも理解できます。人は希望がなければ生きていけないのです。


映画の中で同じように子供を誘拐された人たちのグループが出てきます。どの親も決して諦めていません。子供は必ず生きている、と信じています。決して死んでいるのでは?とは考えません。いや、そんな風に考えたくないのです。


そして中国の悪名高い一人っ子政策。これがまた子供を誘拐された親たちへ追い打ちをかけます。何故って?次の子供を妊娠するためには、国からの許可が必要なのですよ。その許可を得るためには、誘拐された子供が『死んでいる』ことにしなくてはならないのです!そんなこと、親として出来ますか?出来ると思いますか?役所の人間は『でも規則ですから』の一点張り。これだけをとっても、一人っ子政策がいかにおかしな悪法だったかがわかります。先日、中国はこの一人っ子政策を取りやめましたが、この悪法のお陰でどれだけ多くの親たちが今も苦しんでいることか!見ていて腸が煮えくりかえる怒りが。


誘拐した犯人は旦那。でも子供を見つけたときには病死していました。子供を育てていたのはその妻。妻はずっと子供が出来なかったし、その原因は自分にあると死んだ旦那から言われ続けていました。中学中退と言うことでほとんど無学。中国の農村では現在でもそんなものです。学校に行かせて勉強させるより、農業の手伝いをさせた方が生活のためになるからです。ですが、その無知さのせいでこの女性は大変な目に遭います。私から見ていても、この女性は死んだ旦那によって大変な迷惑をかけられただけ、と思えて仕方がありません。


劇中、息子(として育てていた)を偶然見かけて抱きしめてしまいます。でもその場所はちょうど誘拐された親たちが街頭活動をしていた場所。もう、ずっと腹の中に溜め込んでいた誘拐犯への怒りが吹き出してしまいます。この女性に対して殴る蹴るの暴力を集団で振るいます。理解できないわけではない。その誘拐された親たちの悲しさ、そして怒りは十分理解できる。たとえ死んだ旦那が誘拐犯であり、その妻はその犯人でも何でも無いとわかっていても、感情のコントロールが出来ないのです。自分の子供を誘拐した犯人への憎しみと怒りで。でも、それでもと私は言いたい。でも、それでも、この女性に対して怒りをぶつけてはいけない、と。その場にいた実の父親は彼女を守ります。彼は(とりあえず)息子が無事に戻ってきたという心の余裕もありますが、それよりも彼自体の考えからでしょう。彼女も2年以上愛情を心底注ぎ込んで育てた息子なのです。彼女も被害者と言えます。その息子と娘(この娘も死んだ旦那が工事現場で拾ってきたと)からいきなり引き離されたわけです。子供たちからいきなり引き離されるその辛さ、見ていて泣けて仕方がありませんでした。私も似たような経験をしているだけに。会いたくても会わせてもらえない現実。子供と一緒に過ごしたあの時間。無くしてから気がつかされました。その時間がどれほど大切でいとおしい時間だった、と。だからこそ、私は彼女を責められませんし、責めるべきではない、と思います。彼女も被害者なのです。


息子を取り戻した父親は、息子と一時も離れようとしません。そりゃそうですわ。ゴミ捨てに行くときですら、寝ている息子を肩に担いで出て行きます。私も同じ立場ならきっとそうしてしまうでしょう。そういう行動を取るのも凄く理解できます。そして、息子から自分のことを忘れられていて『おじさん、お家に返して』とか言われるという苦しさ、悲しさ。離婚していて裕福な旦那と再婚していた元嫁も、息子が帰ってきて決して幸福になったわけではありません。新しい旦那との子供を拒否しまくっていたからです。誘拐された子供は生きているという思いから仕方ないと言えます。と同時に、この新しい旦那の方も『新しい子供を作れば妻の気持ちも軽くなるのでは?』と、実に安直に考えすぎです。劇中、元夫が彼に言います。『結局は他人事なんだよ、あんたには』と。この新しい旦那がもうちょっと妻の心に寄り添えていたら、もうちょっと共感する心を持っていたのならと思えてしょうが無かったです。


誘拐犯の妻が息子の姿を見たくて、家の側まで来てしまいます。そしてゴミ捨てに出てきた肩に息子を担いだ父親と会います。父親は「怨まないようにするので精一杯だから、来ないでくれ」と言います。これは本音でしょう。怨んだって仕方が無いですし。怒鳴ったり暴力に走らないだけ、この父親の人間性の素晴らしさが出ています。この時、この誘拐犯の妻が「この子は桃アレルギーだから桃を食べさせないで」と言います。これは、父親が子供を探しているときに、誘拐犯に向けて訴えかけた言葉そのものです。この妻は、どれほど子供のことを見ていて、そして愛していたかを証明する言葉です。ここでも泣けてしまいました〜。実の父親もその事がわかるだけに、彼は泣けてしまうのです。彼女がどれほど自分の息子を愛して育てていたかがわかったからです。


終盤、ある事が判明します。見ていた私は『あぁ、死んだ旦那め、死んで後にも妻にこんな仕打ちをするか!』と腹が立って仕方がありませんでしたわ。そして同じようなことが現代日本でも普通に起きているのですよ。種明かしと言う言葉がそのままヒントになってしまいますわ。ホント、男ってくだらないプライドを保つためなら、どんな嘘でも行動もするものだなと。子供を誘拐、そして自分のくだらないプライドのために妻を不幸のどん底に突き落とす。この死んだ旦那に対しては怒り以外ないです。


エンドロールは必ず見てください。この映画の元になった事件のこと、当事者たちの写真や映像、役者たちに当事者たちが会うシーンとかが入ります。泣けたのはやっぱり2年以上育てていた女性のシーン。家に帰っても誰もいない、子供たちはいないという告白に泣けて泣けて。


現代中国の腐った部分、親子の関係というのは血が一番大切なのか?この映画と実際の事件で、一番の被害者は誰なのか?(私はこの子供たちが一番の被害者だと思います!!)いろんな事を考えさせてくれる映画です。答えはまず出ないと思います。では、どの答えが一番良いのか?ひとりひとりが考えなくてはいけないことだと私は思います。誰が一番悪いのか?というのは、そりゃもう死んだ誘拐犯ですけどね。

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